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スタッフブログ 運動学習と脳の関係とは?動きを覚える仕組みと神経可塑性を解説

運動学習と脳の関係とは?動きを覚える仕組みと神経可塑性を解説


 

「自転車に乗る」「箸を使う」「歩く」「字を書く」。

私たちは普段、こうした動きをほとんど意識せずに行っています。しかし、最初から上手にできたわけではありません。

子どもの頃に自転車の練習をしたときのように、最初は何度も失敗しながら、少しずつ身体の動かし方を覚えていきます。

では、私たちはどのようにして「動き」を覚えているのでしょうか。

その背景には、脳と身体が繰り返し情報をやり取りする「運動学習」があります。

そして運動学習には、これまでの記事で紹介した「感覚入力」や「神経可塑性」も深く関係しています。

この記事では、運動学習とは何か、脳と身体の間でどのような情報交換が行われているのか、リハビリテーションとの関係、そして鍼灸との接点まで、できるだけわかりやすく解説します。

 

運動学習とは?

「動きを繰り返して上手になる」だけではありません

運動学習とは、簡単にいうと、経験や練習を通して身体の動かし方を身につけていく過程のことです。

例えば、次のような動作も運動学習の一例です。

  • ・自転車に乗る
  • ・ピアノを弾く
  • ・スポーツのフォームを覚える
  • ・箸を使う
  • ・歩き方を身につける

ここで大切なのは、運動学習が単純に「筋肉が強くなる」という話ではないことです。

脳が身体の動かし方を経験から学んでいく。

この視点が、運動学習を理解するうえで重要になります。

運動学習では脳の中で何が起こっている?

脳は「身体を動かす」だけではありません

例えば、目の前にあるコップを手に取る場面を考えてみましょう。

脳は「手をこの方向へ動かそう」と判断し、身体へ指令を送ります。

すると手が動き、実際にコップへ手が届きます。

そのとき脳には、目から見える情報だけでなく、筋肉や関節などからも「どのくらい手が動いたのか」「どの位置に手があるのか」といった情報が戻ってきます。

もし思った位置からずれていれば、次の動きを少し修正します。

このように、

「動かす → 感じる → 確認する → 修正する」

という循環が、私たちの動きを支えています。

 

脳は身体からのフィードバックを利用しています

身体を動かすと、身体から脳へさまざまな情報が戻ってきます。

  • ・筋肉がどのくらい伸びているか
  • ・関節がどの方向へ動いているか
  • ・足が床に触れている感覚
  • ・手にどのくらい力が入っているか
  • ・身体が傾いていないか

こうした情報は、動きを調整するための大切な手がかりになります。

つまり、身体を動かすことと、身体から情報を受け取ることは切り離せません。

運動学習に関わる脳の仕組み

運動学習には、脳の一つの場所だけではなく、複数の領域が関わっています。

運動野――身体の動きをコントロールする領域

大脳には、身体を動かすことに関わる「運動野」と呼ばれる領域があります。

ここでは、身体をどのように動かすのかという情報が処理されています。

ただし、実際の運動は運動野だけで行われているわけではありません。

脳のさまざまな領域が情報をやり取りしながら、目的に合わせて身体の動きを調整しています。

小脳――動きの滑らかさやバランスを調整する

小脳は、身体のバランスや動きのタイミング、正確さなどに関わる重要な領域です。

例えば、初めはぎこちなかった動作が、練習を重ねることで徐々に滑らかになっていく背景にも、小脳を含む複数の神経回路が関係しています。

大脳基底核――動作の選択や習慣化に関わる

大脳基底核も、運動や学習に関わる重要な脳の領域です。

動作を始めることや、状況に応じて動きを選択すること、繰り返しによって動作が身につくことなどに関係しています。

このように、私たちが一つの動作を身につけるまでには、脳のさまざまな場所が協力して働いています。

なぜ「繰り返し練習」すると動きが上手になるの?

脳は繰り返された経験を学習します

運動学習では「反復」が重要な要素の一つです。

例えば、初めてボールを投げるときには、「どのくらい腕を動かせばいいのか」「どのくらい力を入れればいいのか」と考えながら動きます。

しかし、何度も練習していると、徐々に細かなことを意識しなくても動かせるようになります。

これは、繰り返し経験することで、脳や神経系の情報処理の仕方が変化していくためです。

 

つまり、「練習する」という経験そのものが、脳にとって学習になるのです。

ただし「回数を増やせばよい」というわけではありません

運動学習では、単純に回数だけを増やせばよいわけではありません。

どのような動作を行うのか、どの程度の難しさにするのか、どのようなフィードバックを受けるのかなども重要になります。

例えば、身体に負担の大きい動作や間違った動作を無理に繰り返してしまうと、望ましくない動作パターンを身につけてしまう可能性があります。

そのため、「何を、どのように、どのくらい繰り返すのか」が大切です。

運動学習と神経可塑性

練習によって神経ネットワークは変化します

前回の記事で紹介した「神経可塑性」とは、脳や神経系が経験や学習などによって変化する性質のことです。

運動学習も、神経可塑性を考えるうえで重要な例の一つです。

繰り返し練習することで、運動に関係する神経回路の働き方が変化し、より効率的な動作につながっていくことがあります。

そのため、リハビリテーションにおいても、適切な動作を繰り返し経験することが重要な考え方の一つになっています。

「脳に新しい回路を作る」だけではありません

神経可塑性という言葉から、「新しい神経細胞が次々に生まれて、壊れた脳を完全に作り直す」というイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、実際の神経可塑性はもっと複雑です。

すでに存在する神経回路の働き方が変化したり、神経同士のつながりが変化したり、これまでとは異なる神経ネットワークが動作に関わるようになったりすることがあります。

つまり、神経可塑性とは単純に「新しい回路を作る」ということではなく、経験に応じて脳や神経系の働き方が変化していくことと考えると分かりやすいでしょう。

運動学習には「感覚」が欠かせない

目で見ることも大切な情報です

例えば鏡を見ながら身体を動かすと、「腕が思ったより上がっていない」「身体が少し傾いている」といったことに気づくことがあります。

このように、視覚から得られる情報も運動を調整するための重要な手がかりになります。

身体の中からも情報が届いています

視覚だけではありません。

筋肉や関節などからも、「身体が今どのような状態なのか」という情報が脳へ送られています。

例えば、目を閉じていても、自分の腕が上にあるのか下にあるのか、おおよそ分かります。

これは身体内部から届く感覚情報を脳が利用しているためです。

そのため、運動学習では、

感覚入力 → 運動 → 感覚フィードバック → 運動の修正

という循環が重要になります。

リハビリテーションと運動学習

リハビリは「動きをもう一度学ぶ」作業でもあります

脳卒中などによって、それまでできていた動作が難しくなることがあります。

そのような場合、リハビリテーションでは残されている機能を活用しながら、必要な動作を再び学習していくことがあります。

例えば、

動こうとする

身体を動かす

動きを感じる

結果を確認する

動きを修正する

繰り返す

という過程です。

もちろん、実際のリハビリテーションは疾患や症状によって大きく異なります。しかし、「身体を動かす経験を積み重ねることで、動作を学習していく」という視点は、運動リハビリテーションを理解するうえで大切です。

反復だけでなく「実際の生活で使うこと」も重要です

リハビリでは、単純に同じ動作を繰り返すだけではなく、実際の生活で必要となる動作を練習することもあります。

  • ・ベッドから起き上がる
  • ・椅子から立つ
  • ・箸を使う
  • ・ボタンを留める
  • ・歩く

「何のためにこの動作を練習するのか」が明確になることで、日常生活につながる練習として取り組みやすくなります。

運動学習を支える「感覚―運動ループ」

運動学習を理解するうえで、もう一つ重要なのが、感覚と運動が循環しているという考え方です。

例えば、次のような流れです。

脳が「動こう」と指令する

身体が動く

皮膚・筋肉・関節などから感覚情報が届く

脳が「実際にどう動いたのか」を確認する

次の動きを調整する

再び動く

この経験が積み重なり、動作の学習につながる

私たちが何気なく行っている歩行や手の動きも、このような情報のやり取りの積み重ねによって支えられています。

では、鍼灸は運動学習とどう関係する?

鍼刺激も身体から入る感覚情報の一つです

鍼刺激では、皮膚やその周囲の組織に刺激を加えます。

その刺激によって生じた情報は、身体の感覚を伝える神経系を介して中枢神経系へ伝わります。

その意味では、鍼刺激も身体から神経系へ入る感覚入力の一つとして捉えることができます。

ただし、ここから「鍼を刺すことで運動学習が直接促進される」と一般化することはできません。

鍼灸と運動機能との関係については、症状や疾患、刺激方法などによって考え方が異なるため、慎重に捉える必要があります。

「刺激を与えて終わり」ではなく、その後の動きにつなげる

当院では、鍼灸を単独で「脳を変える治療」と考えるのではなく、身体から得られる感覚情報を、その後の運動や身体活動にどのようにつなげていくかという視点も大切にしています。

例えば、

感覚刺激

運動

反復

適切なフィードバック

という組み合わせです。

これは、「刺激を与えればそれだけで変化が起こる」という考え方ではありません。

身体を動かし、その結果を感じ、必要に応じて動きを修正する。

こうした感覚と運動の循環を意識することが、運動学習を考えるうえで重要だと当院では考えています。

東京銀座鍼灸院が考える「脳と身体」の関係

当院では、身体を単に「筋肉や関節の集合」として見るのではなく、脳と身体が常に情報を交換しているシステムとして捉えることを大切にしています。

例えば「歩きにくい」という症状があった場合でも、その背景にはさまざまな要素が関係している可能性があります。

  • ・筋肉の状態
  • ・関節の動き
  • ・神経の働き
  • ・身体からの感覚情報
  • ・姿勢
  • ・運動パターン
  • ・脳による情報処理

そのため、一つの場所だけを見るのではなく、「脳と身体の情報のやり取り」という視点から状態を考えることも大切だと考えています。

リセプター療法と運動学習

当院で行っているリセプター療法についても、この「感覚と運動の循環」という考え方から捉えることができます。

身体から入る感覚情報を意識しながら、

感覚

脳での情報処理

運動

再び感覚

という循環を考えていきます。

運動学習では、動いた結果を感じ、その情報をもとに次の動きを調整することが重要です。

そのため当院では、単に「身体を動かす」だけでなく、身体からどのような情報が入っているのかという点にも目を向けています。

運動学習を日常生活で活かすには?

「正しく動く」だけでなく「感じながら動く」

身体を動かすときには、動作そのものだけでなく、身体から得られる感覚にも意識を向けてみましょう。

  • ・どこが動いているか
  • ・足裏はどのように床を感じているか
  • ・左右で違いはあるか
  • ・身体がどちらに傾いているか

こうした身体への意識は、自分の動きを確認するための手がかりになります。

無理のない範囲で繰り返す

神経系の学習には、継続的な経験が重要です。

ただし、痛みや強い疲労を我慢して無理に繰り返す必要はありません。

自分の状態に合った負荷で、質のよい反復を行うことが大切です。

休息も運動学習の一部です

「脳に刺激を与え続ければ、どんどん学習する」と考えてしまうかもしれません。

しかし、身体と脳には休息も必要です。

十分な睡眠や休息をとりながら、無理なく継続することを心がけましょう。

よくある質問

Q.運動すると脳も鍛えられますか?

A.運動すると、身体だけでなく、動きを計画したり、身体からの感覚情報を受け取ったりするために脳も働きます。

ただし、「特定の運動をすれば脳が必ず若返る」といった単純な説明はできません。

運動の種類や強度、年齢、体調などによっても異なります。

Q.年齢を重ねても運動学習はできますか?

A.はい。年齢を重ねても、新しい動作を学習することは可能です。

脳や神経系には、生涯を通じて変化する性質があります。

ただし、学習の速さや身体的な条件には個人差があります。無理のない範囲で継続することが大切です。

Q.リハビリは長く続けるほどよいのでしょうか?

A.継続することは大切ですが、単純に時間や回数を増やせばよいわけではありません。

症状や体力に合わせて、適切な課題、負荷、頻度を設定することが重要です。

Q.鍼灸だけで運動機能を改善できますか?

A.鍼灸だけで神経疾患による運動障害を改善できると断定することはできません。

特に脳卒中などの神経疾患では、医師や理学療法士などの専門職による評価やリハビリテーションが重要です。

鍼灸を受ける場合も、必要に応じて医療機関などと連携しながら、現在の状態に合わせて考えていくことが大切です。

「動くこと」は、脳にとって学習でもある

私たちが何気なく行っている「歩く」「手を伸ばす」「物をつかむ」といった動作の裏では、脳と身体が絶えず情報を交換しています。

脳が動きを指令する

身体が動く

感覚情報が脳へ戻る

脳が動きを調整する

繰り返す

この積み重ねによって、私たちは少しずつ動作を学習していきます。

そして、その背景には、経験や学習によって脳や神経系が変化する「神経可塑性」があります。

だからこそ、「感じること」と「動くこと」は、運動学習を考えるうえで切り離せない関係にあります。

鍼灸についても、身体への刺激が神経系へどのような情報を届けるのか、そしてそれが身体の機能とどのように関係するのかについて研究が続けられています。

ただし、神経系に刺激が伝わることと、実際に症状が改善することは同じではありません。鍼灸の可能性についても、現在分かっていることと、今後検証されるべきことを分けて考えることが大切です。

東京銀座鍼灸院では、東洋医学の考え方に加えて、脳と身体の情報のやり取りという視点も大切にしながら、お一人おひとりの状態を確認して施術を行っています。

このようなお悩みがある方へ

  • ・以前より身体が動かしにくくなった
  • ・動作がぎこちなくなった
  • ・身体を思うようにコントロールできない
  • ・リハビリを続けているが、思うように動かない
  • ・身体の感覚が以前と違うように感じる
  • ・脳と身体のつながりについて詳しく知りたい

このようなお悩みがある場合は、筋肉や関節だけを見るのではなく、感覚・運動・脳の情報のやり取りという視点から現在の状態を考えてみることも一つの方法です。

 

東京銀座鍼灸院では、東洋医学と神経科学の両面から、お一人おひとりの状態を確認し、施術方針をご提案しています。

気になる症状がある方は、まず現在のお身体の状態についてご相談ください。

鍼灸師 人見

 

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