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スタッフブログ 脳と睡眠の関係とは?眠っている間の脳の働きを解説
脳と睡眠 について。眠っている間に起こる脳の働きと睡眠の重要性を解説
「寝ているのに疲れが取れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝すっきり起きられない」。このような睡眠のお悩みを抱えている方は少なくありません。
睡眠は、単に身体を休ませるための時間ではありません。私たちが眠っている間も、脳ではさまざまな情報処理が行われています。
特に、これまでご紹介してきた神経可塑性・感覚入力・運動学習を考えるうえでも、睡眠は重要な意味を持ちます。
日中に受け取った情報や学習したことは、睡眠中にも脳内で整理され、記憶や学習の定着に関わると考えられています。
では、なぜ眠ることが脳にとって大切なのでしょうか?
この記事では、脳と睡眠の関係について、睡眠中の脳の働き、記憶や運動学習との関係、睡眠不足が脳や身体に与える影響、そして鍼灸との接点まで、できるだけ分かりやすく解説します。
睡眠とは「脳を休ませる時間」だけではありません
睡眠というと、「身体と脳を休ませる時間」というイメージがあるかもしれません。
もちろん、睡眠には心身を休息させる重要な役割があります。しかし、睡眠中の脳は完全に活動を止めているわけではありません。
睡眠中には、覚醒しているときとは異なる脳活動が現れ、記憶や学習、感情の処理、身体の回復など、さまざまな生理的な過程が関係しています。
つまり睡眠は、単なる「停止時間」ではなく、脳と身体が翌日の活動に向けて状態を整えるための重要な時間と考えることができます。
睡眠中、脳では何が起こっている?
眠っていても脳が完全に止まるわけではない
睡眠には、脳波や身体の状態が異なる複数の段階があります。
大きく分けると、睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠があります。
- ・ノンレム睡眠:比較的深い睡眠を含み、身体や脳の休息に重要
- ・レム睡眠:脳活動が比較的活発で、夢を見ることが多い睡眠段階
これらの睡眠段階は一晩の中で繰り返されます。
そのため、「眠っているか、起きているか」という単純な二つの状態ではなく、睡眠中にも脳と身体の状態は変化しているのです。
睡眠中にも脳は情報を処理している
私たちは日中、目や耳、皮膚、筋肉、関節などを通して、膨大な量の情報を受け取っています。
さらに、仕事をしたり、人と話したり、身体を動かしたり、新しいことを覚えたりすることで、脳にはさまざまな経験が蓄積されます。
睡眠は、こうした日中の経験と無関係な時間ではありません。
睡眠中の脳活動は、記憶の固定や学習の定着などに関係すると考えられています。
睡眠と記憶にはどんな関係がある?
「覚える」だけでなく「定着させる」ことも重要
新しいことを覚えるとき、私たちはまず情報を取り込みます。
しかし、情報を取り込んだだけですべてが長期的な記憶になるわけではありません。
学習した情報が、その後の睡眠を含む過程の中で整理され、より安定した記憶として定着していくことがあります。
このような睡眠と記憶の関係は、これまで紹介してきた「神経可塑性」ともつながっています。
睡眠は神経可塑性とも関係する
神経可塑性とは、経験や学習などに応じて、脳や神経系の働き方が変化する性質のことです。
私たちが新しい動作を覚えたり、知識を身につけたりするときにも、神経ネットワークにはさまざまな変化が起こります。
そして睡眠は、こうした学習後の神経系の変化や記憶の定着を支える重要な生理的過程の一つと考えられています。
つまり、
経験する → 学習する → 眠る → 情報が整理・定着する
という流れで考えると、睡眠が脳にとってどれほど重要なのかが見えてきます。
運動学習と睡眠の関係
前回の記事では、「運動学習と脳」について紹介しました。
自転車に乗る、歩く、箸を使う、スポーツの動きを覚えるなど、身体の動作も練習や経験を通して学習されていきます。
そして興味深いことに、こうした運動技能の学習にも睡眠が関係しています。
練習しただけでは終わらない
例えば、初めてピアノを弾いたり、新しいスポーツの動きを練習したりすると、最初は動作がぎこちないことがあります。
何度も練習することで徐々に動きが安定していきますが、学習は練習している時間だけに起こるわけではありません。
運動技能の学習では、練習後の睡眠を含む時間経過の中で、動作の記憶や技能がより安定していく「オフライン学習」が起こることがあります。
そのため、運動学習を考えるときには、
感覚入力 → 運動 → フィードバック → 反復 → 睡眠
という一連の流れで考えることもできます。
「寝れば脳がリセットされる」は本当?
睡眠を「脳のリセット」と表現することがあります。
これはイメージとしては分かりやすい一方で、医学的には少し注意が必要です。
睡眠中に脳が完全にリセットされ、不要な情報がすべて消えるというわけではありません。
むしろ、睡眠中にも脳は活動しており、記憶や学習、感情、神経活動などに関わる複雑な処理が行われています。
「何もしていない時間」ではなく、「脳が別の仕事をしている時間」と考えると、睡眠の意味を理解しやすくなります。
睡眠不足になると脳はどうなる?
集中力や注意力に影響することがある
睡眠が不足すると、日中の眠気だけでなく、注意力や集中力、判断力などにも影響することがあります。
そのため、睡眠不足が続くと、
- ・仕事や勉強に集中しにくい
- ・ミスが増える
- ・頭がぼんやりする
- ・判断に時間がかかる
- ・日中に強い眠気を感じる
といった状態につながることがあります。
以前の記事で紹介した「ブレインフォグ」を考える際にも、睡眠は無視できない要素の一つです。
ただし、頭がぼんやりする原因は睡眠不足だけとは限りません。ストレス、体調、薬剤、疾患などさまざまな要因が関係する可能性があります。
睡眠不足は「脳だけ」の問題ではない
睡眠は脳だけで完結するものではありません。
自律神経、ホルモン、免疫、代謝など、身体のさまざまなシステムと関係しています。
そのため、睡眠の質が低下すると、単に「眠い」というだけではなく、日中の身体感覚や気分、活動量などにも影響することがあります。
睡眠の質を考えるときに大切なこと
睡眠時間だけを見る必要はありません
「何時間眠れば十分なのか」と考える方は多いでしょう。
しかし、必要な睡眠時間には個人差があります。また、睡眠を考えるときには時間だけでなく、睡眠の規則性や途中で目覚める回数、日中の眠気、起床時の状態なども重要です。
例えば、長時間ベッドに入っていても、眠りが浅かったり、何度も目が覚めたりすれば、十分に休めたと感じられないことがあります。
生活リズムを整える
睡眠を整えるうえでは、毎日の生活リズムも重要です。
- ・できるだけ起床時間を大きく変えない
- ・朝に光を浴びる
- ・日中に適度に身体を動かす
- ・就寝前は強い光や刺激を避ける
- ・自分に合った睡眠環境を整える
ただし、睡眠のお悩みにはさまざまな原因があります。
生活習慣を整えても改善しない場合や、強い日中の眠気、いびきや睡眠中の呼吸停止が疑われる場合などは、医療機関への相談も大切です。
脳と自律神経は睡眠とどう関係する?
睡眠と自律神経は、切り離して考えることができません。
自律神経は、心拍、呼吸、体温、消化など、意識とは別に身体の状態を調整する働きに関わっています。
睡眠中にも自律神経活動は変化しており、睡眠の段階によって身体の状態も変わります。
一方で、ストレスや生活リズムの乱れなどが睡眠に影響することもあります。
そのため、睡眠のお悩みを考える際には、「眠れない」という一点だけを見るのではなく、日中の活動、ストレス、生活リズム、身体の状態などを含めて考えることが大切です。
では、鍼灸は睡眠とどう関係するのでしょうか?
鍼灸では「睡眠だけ」を見るわけではありません
鍼灸では、睡眠のお悩みに対して、睡眠そのものだけを見るのではなく、身体全体の状態を確認しながら施術を考えることがあります。
東洋医学では、睡眠についても身体全体のバランスという視点から状態を捉えます。
一方、現代医学・神経科学の視点では、睡眠には脳、自律神経、ホルモン、体内時計、環境など、さまざまな要素が関係しています。
こうした異なる視点を組み合わせながら、現在の状態を丁寧に確認することが重要です。
鍼刺激と神経系
鍼刺激は、皮膚や筋肉などに存在する感覚受容器や末梢神経系への刺激となり、その情報は神経系へ伝えられます。
前回の記事で紹介した「感覚入力」という考え方も、ここでつながります。
ただし、鍼灸によって睡眠が必ず改善すると断定することはできません。
睡眠に対する鍼灸の研究では一定の有用性を示す報告がある一方、研究方法や対象、施術内容などには違いがあり、すべての人に同じ結果が得られるとは限りません。
そのため、鍼灸を睡眠のお悩みに対する選択肢の一つとして考え、必要に応じて医療機関での評価や治療と組み合わせることが大切です。
「感覚入力 → 運動 → 睡眠」という脳のサイクル
私たちは日中、身体を動かしながらさまざまな感覚情報を受け取っています。
その情報をもとに脳が身体を調整し、繰り返し経験することで運動や動作を学習していきます。
そして、その後に訪れる睡眠も、学習や記憶の定着を支える重要な時間になります。
感覚入力
↓
運動・活動
↓
感覚フィードバック
↓
運動学習
↓
睡眠
↓
学習・記憶の定着を支える
このように考えると、脳と身体は一日の中で絶えず情報をやり取りしながら、その状態を調整していることが分かります。
睡眠は「脳の学習環境」の一部
運動学習の記事では、「繰り返すこと」の重要性について紹介しました。
しかし、脳の学習を考えるうえでは、練習量だけに注目することはできません。
十分な休息や睡眠も、学習を支える重要な要素です。
例えば、身体を使った練習を一日中続けるよりも、適切な練習と休息を組み合わせるほうが、学習を考えるうえでは合理的な場合があります。
つまり、
「脳を使うこと」と「脳を休ませること」は対立するものではありません。
どちらも、脳が経験を処理し、適応していくために重要な要素なのです。
東京銀座鍼灸院が考える「脳と身体と睡眠」の関係
当院では、身体を単に筋肉や関節だけの問題として見るのではなく、脳と身体が常に情報交換をしているシステムとして捉えることを大切にしています。
例えば「眠れない」というお悩みであっても、その背景には生活リズム、ストレス、身体の緊張、感覚刺激、日中の活動量など、さまざまな要素が関係している可能性があります。
そのため、睡眠だけに焦点を当てるのではなく、
- ・日中の身体活動
- ・身体の緊張や感覚
- ・生活リズム
- ・睡眠の状態
- ・自律神経に関わる状態
- ・脳と身体の情報のやり取り
などを含めて、お一人おひとりの状態を確認することを大切にしています。
睡眠についてよくある質問
Q:寝ている間も脳は働いているのですか?
はい。睡眠中も脳は活動しています。
睡眠中には覚醒時とは異なる脳活動が現れ、記憶や学習、感情などに関わるさまざまな過程が行われています。
Q:睡眠を取れば、覚えたことが必ず身につきますか?
睡眠は記憶や学習の定着を支える重要な要素ですが、睡眠だけで学習が完成するわけではありません。
学習内容、練習方法、注意、反復、個人差など、さまざまな要素が関係します。
Q:運動するとよく眠れるようになりますか?
適度な身体活動は、睡眠を含む健康的な生活習慣の一部として重要です。
一方で、運動すれば必ず睡眠の問題が解決するとは限りません。運動の時間帯や強度、体調などにも配慮する必要があります。
Q:睡眠の悩みに鍼灸は使えますか?
鍼灸は睡眠のお悩みに対する選択肢の一つとして検討されることがあります。
実際に当院にも、睡眠のお悩みで通院されている患者様もいらっしゃいます。
ただし、鍼灸だけで睡眠障害の原因をすべて解決できるわけではありません。
強い不眠が続いている場合や、日中の強い眠気、いびき・呼吸停止などがある場合には、まず医療機関へ相談することをおすすめします。
眠っている間も、脳は学び、整えている
私たちが眠っている間、脳は完全に停止しているわけではありません。
睡眠中には、覚醒時とは異なる脳活動が起こり、記憶や学習、身体の回復など、さまざまな生理的な過程が関係しています。
これまで紹介してきた内容とつなげると、
脳は経験によって変化する。
↓
身体から入る感覚情報が、脳の活動に影響する。
↓
感覚と運動の繰り返しによって、動作を学習していく。
↓
そして睡眠は、学習や記憶の定着を支える重要な時間になる。
このように考えると、脳にとって「活動すること」と「眠ること」は、どちらも大切であることが分かります。
「眠れない」「朝起きてもすっきりしない」「日中に頭がぼんやりする」といった状態が続いている場合は、睡眠だけを見るのではなく、日中の活動や身体の状態、生活リズムなどを含めて見直してみることも大切です。
睡眠についてお悩みの方へ
「なかなか眠れない」
「夜中に何度も目が覚める」
「眠っているはずなのに疲れが取れない」
「日中に頭がぼんやりする」
このようなお悩みがある場合は、睡眠だけに原因を求めるのではなく、日中の活動、身体の緊張、感覚、自律神経、生活リズムなど、さまざまな角度から現在の状態を考えてみることも一つの方法です。
東京銀座鍼灸院では、東洋医学の考え方に加え、神経科学の視点も取り入れながら、お一人おひとりの状態を確認して施術を行っています。
なお、睡眠のお悩みの背景には睡眠障害や身体疾患などが隠れている場合もあります。症状が強い場合や長期間続いている場合には、医療機関への相談も大切です。
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- 第4回:神経可塑性とは?
- 第5回:感覚入力が脳を変える?
- 第6回:運動学習と脳とは?
「脳は変化する」という神経可塑性から始まり、感覚入力、運動学習、そして睡眠へ。
次回は、さらに「脳と痛み」というテーマから、痛みが単なる身体の損傷だけでは説明できない理由や、脳と神経系が痛みをどのように処理しているのかについて解説していきます。
鍼灸師 人見
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