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スタッフブログ DBSとは?脳深部刺激療法の仕組みと、新脳針との違いを解説
DBSとは?脳深部刺激療法の仕組みと新脳針との違いを解説
「DBSという治療を聞いたことがあるけれど、どのような治療なの?」
「パーキンソン病では、どのような場合にDBSが検討されるの?」
「DBSと鍼灸や新脳針には、どのような違いがあるの?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
DBSは、脳の特定の部位に電極を留置し、電気刺激によって神経回路の活動を調整する治療法です。
正式名称はDeep Brain Stimulation(脳深部刺激療法)といい、特にパーキンソン病の運動症状に対する治療選択肢として知られています。振戦やジストニアなど、一部の運動症状に対しても用いられています。
参考:慶應義塾大学病院 KOMPAS.脳深部刺激療法(DBS:deep brain stimulation)
一方、当院で行っている「新脳針療法」は、鍼刺激や必要に応じた電気刺激を用いる鍼灸による施術です。
この記事では、DBSの基本的な仕組み、手術、検討されるケース、注意点について整理したうえで、DBSと新脳針の違いをわかりやすく解説します。
DBSとは?
・DBSは脳深部に電極を留置して刺激する治療
DBSは、Deep Brain Stimulation(脳深部刺激療法)の略称です。
脳の深部に細い電極(リード)を留置し、皮下に埋め込んだ刺激装置から電気刺激を送ります。
一般的なDBSシステムでは、脳内に留置する電極、皮下を通る延長リード、胸部などに埋め込む刺激装置から構成されます。刺激装置から送られた電気パルスが脳内の電極へ伝わり、標的となる部位を刺激します。
・DBSはどのような疾患で用いられる?
DBSは、特にパーキンソン病との関連がよく知られています。
パーキンソン病では、振戦(ふるえ)、筋固縮(筋肉のこわばり)、動作緩慢などの運動症状や、薬の効果が切れる「オフ」の時間、ジスキネジアなどが問題となることがあります。
DBSは、このような運動症状の一部を対象とする治療選択肢の一つです。特に、薬物療法によって症状が十分にコントロールできない場合や、薬の効果が切れる時間、薬に関連した不随意運動などが問題となっている場合に検討されることがあります。
また、パーキンソン病以外にも、本態性振戦やジストニアなど、特定の運動障害に対してDBSが用いられる場合があります。
ただし、DBSの適応は疾患名だけで決まるものではなく、症状の種類や程度、これまでの治療経過、全身状態などを含めて専門医が判断します。
DBSはどのようにして症状に働きかける?
・脳の特定部位に電極を留置する
DBSでは、症状や治療目的に応じて、脳内の標的となる部位に電極を留置します。
パーキンソン病では、視床下核(STN)や淡蒼球内節(GPi)などが代表的な刺激部位として知られています。また、振戦では視床の一部が標的となることがあります。
どの部位を刺激するかは、疾患だけでなく、症状の種類や治療目標などを踏まえて検討されます。
・電気刺激によって神経回路の活動を調整する
電極から脳へ電気刺激を加えることで、症状に関係する神経回路の活動を調整することを目指します。
ただし、DBSがどのような細胞・神経回路の変化を通じて症状に作用するのかについては、すべてが完全に解明されているわけではありません。
現在では、単に「脳の一部分を刺激する」というより、刺激によって標的となる神経活動や関連する神経回路の働きに影響を与える治療として理解されています。
・刺激条件は患者さんに合わせて調整される
DBSは、電極を留置して手術が終われば完了する治療ではありません。
手術後には刺激装置の設定を調整し、症状や副作用などを確認しながら、刺激条件を調整していきます。
患者さんごとに症状や反応が異なるため、一人ひとりの状態に合わせた継続的な調整とフォローアップが重要です。
DBSはどのような場合に検討される?
・薬物療法だけでは十分なコントロールが難しい場合
パーキンソン病では、まず薬物療法を中心とした治療が行われます。
そのうえで、薬の効果が切れる時間が長くなったり、薬によるジスキネジアなどが問題となったりして、薬物療法だけでは症状のコントロールが難しくなった場合に、DBSが治療選択肢として検討されることがあります。
ただし、「薬が効かなくなったらDBS」という単純な判断ではありません。
薬に対する症状の反応や症状の種類、認知機能、全身状態、手術への適応などを総合的に評価する必要があります。
・症状・薬への反応・全身状態などを総合的に判断
DBSを検討する際には、神経内科などの専門医による評価が重要です。
たとえば、
- ・どのような症状があるのか
- ・症状が薬によってどの程度変化するのか
- ・薬の効果が切れる時間がどの程度あるのか
- ・ジスキネジアなどの運動合併症があるか
- ・認知機能や精神・心理面の状態
- ・手術やその後の治療に耐えられる全身状態か
などを含めて検討します。
DBSはすべてのパーキンソン病患者さんに適しているわけではなく、「DBSで何を改善したいのか」「DBSで改善が期待できる症状なのか」を専門医と確認することが大切です。
・手術後も継続的な調整が必要
DBSでは、手術後に刺激装置の設定を調整しながら、症状と副作用のバランスを確認していきます。
また、パーキンソン病では病気の経過に伴って症状が変化するため、DBSを受けた後も薬物療法やリハビリテーションなどを組み合わせながら治療を続けることがあります。
DBSの特徴と注意点
・脳深部を直接刺激できる脳深部の特定部位に、電極を留置して刺激する
DBSの特徴は、脳深部の特定部位に電極を留置し、電気刺激を行うことです。
特定の運動症状については、薬物療法だけでは十分にコントロールが難しい場合の治療選択肢となることがあります。
・外科手術が必要
DBSでは、脳内に電極を留置するための外科手術が必要です。
さらに、電極と刺激装置を接続するためのリードを皮下に通し、刺激装置を胸部などに埋め込みます。
そのため、DBSを検討する際には、期待される利益だけでなく、手術に伴うリスクについても十分に理解する必要があります。
・合併症や副作用について理解する必要がある
DBSには、手術そのものに伴うリスクと、電気刺激や機器に関連する問題の両方があります。
手術に関連して、出血、感染、けいれん、その他の神経学的な合併症などが起こる可能性があります。
また、刺激条件や刺激部位によって、発話、バランス、感覚、気分などに変化が生じる場合があります。
認知機能についても、刺激部位や患者さんの状態などによって影響が異なるため、個別に評価する必要があります。
一方で、刺激条件を調整することで副作用が軽減される場合もあります。
具体的なリスクは、疾患、手術方法、使用する機器、患者さんの状態などによって異なるため、実施医療機関で詳しい説明を受けることが大切です。
参考:Petersen JJ, et al. Deep brain stimulation for Parkinson’s disease: systematic review with meta-analysis and trial sequential analysis. BMJ Medicine.PubMed
・すべての症状に同じように効果があるわけではありません
DBSについて特に大切なのは、「DBSを受ければパーキンソン病が治る」という治療ではないということです。
DBSは、パーキンソン病そのものの進行を止める治療ではなく、主に特定の運動症状をコントロールすることを目的としています。症状によってDBSへの反応は異なり、改善が期待しにくい症状もあります。
そのため、DBSを検討するときには、「病気を治すかどうか」ではなく、「どの症状について、どのような治療上の目的があるのか」を専門医と具体的に確認することが重要です。
DBSと新脳針は何が違う?
DBSと新脳針は、どちらも「刺激」という言葉で説明されることがありますが、刺激する場所、方法、目的、医学的な位置づけが大きく異なります。

DBSは、脳内に電極を留置して電気刺激を行う医療です。一方、新脳針は、鍼刺激や必要に応じた電気刺激を用いる鍼灸による施術です。
新脳針は、DBSと同じ作用を持つ治療でも、DBSの代わりになる治療でもありません。
後の項目でも詳しく解説しますが、当院で行なっている新脳針とは、鍼刺激と微弱電流による電気刺激を通して、脳内伝達物質の分泌を補助したり、確率共鳴という現象を促すことを期待して治療する鍼灸治療のことです。
DBSと新脳針を「代替治療」として考えないことが大切
・DBSが必要な患者さんは専門医療を優先する
DBSを検討するような症状がある場合、まずは神経内科などの専門医療機関で、現在の症状や治療経過を正確に評価してもらうことが重要です。
特にパーキンソン病では、薬物療法、リハビリテーション、生活上の工夫などを含めた総合的な治療が行われます。
DBSについて検討している方は、「鍼灸を受ければDBSを受けなくてもよい」と自己判断するのではなく、DBSを含めた治療選択肢について専門医に相談することが大切です。
現在、医療機関で診断や治療を受けている方が鍼灸を併用する場合には、現在の治療内容を主治医にも共有しておくことをおすすめします。
新脳針では「脳と身体の情報交換」に着目
・脳から身体へ、身体から脳へ
脳と身体は、一方向だけにつながっているわけではありません。
脳から身体へは、運動などの指令が伝わります。一方、身体から脳へは、触覚、圧覚、痛覚、温度、筋肉や関節の位置など、さまざまな感覚情報が伝わっています。
このような脳と身体の双方向の情報交換は、私たちが身体を動かしたり、環境を認識したりするうえで重要な役割を担っています。
・感覚入力と神経系
身体に刺激が加わると、その情報は末梢神経を介して中枢神経系へ伝わります。
鍼刺激も、身体に加えられる刺激の一つとして、神経系への感覚入力を生じさせるものと考えることができます。
※「感覚入力が生じる」という生理学的な説明と、「その刺激によって特定の疾患が改善する」という臨床的な効果は分けて考える必要があります。
・頭部への鍼刺激と微弱な通電
新脳針では、頭部を中心に全身への鍼刺激を行い、0.7mAの微弱電流による電気刺激を用いて「確率共鳴」を目指します。
当院では、これらの刺激について、神経系にどのような影響を与える可能性があるのかという視点から施術を考えています。
パーキンソン病などの神経疾患で大切なこと
・まず正確な診断を受ける
パーキンソン病や振戦、ジストニアなど、運動症状を伴う神経疾患では、症状が似ていても原因や治療方針が異なる場合があります。
そのため、まず専門医による診察や必要な検査を受け、現在の状態を正確に把握することが重要です。
・薬物療法やリハビリテーションを大切にする
パーキンソン病では、薬物療法やリハビリテーションなどを組み合わせながら、症状や生活の状況に応じて治療を行います。
DBSを受けた場合も、薬物療法やリハビリテーションが不要になるとは限りません。DBS後も症状の変化に合わせた薬や刺激条件の調整が行われることがあります。
・鍼灸を併用する場合は治療内容を共有する
現在、神経内科などで治療を受けている方が鍼灸を併用する場合は、現在の診断や治療内容を鍼灸師にも伝えてください。
また、DBSなどの植込み型医療機器を使用している方は、必ず施術前にお伝えください。
特に電気刺激を伴う施術については、使用している機器の種類やメーカーの注意事項などを確認したうえで、安全性を慎重に判断する必要があります。必要に応じて、DBSを管理している医療機関にもご相談ください。
東京 銀座鍼灸院の新脳針療法
東京 銀座鍼灸院では、鍼灸の知見を基礎に、解剖学・生理学・神経科学などの知見も参考にしながら、当院で行っている「新脳針療法」に取り組んでいます。
・病名だけでなく、症状の現れ方を見ます
同じ病名であっても、症状の種類や程度、身体の状態、生活への影響は一人ひとり異なります。
そのため当院では、病名だけで判断するのではなく、現在どのような症状があるのか、どのような場面で困っているのか、身体にどのような変化があるのかなどを確認しながら、鍼灸による施術を検討します。
・東洋医学と神経科学の両面から考えます
当院では、東洋医学の身体観を大切にしながら、解剖学・生理学・神経科学などの知見も参考にして、身体への刺激について考えています。
これは、新脳針の作用や効果が神経科学によって確立されているという意味ではありませんが、
確立された医学的知見と、鍼灸における施術上の考え方を区別しながら、患者さんの状態を考えることを何より大切にしています。
・患者さん・ご家族のお話を丁寧に伺っていきます
神経疾患では、症状そのものだけでなく、日常生活で何に困っているのか、ご家族がどのようなことを心配されているのかを知ることも大切です。
当院では、現在の症状やこれまでの経過などを伺いながら、鍼灸によってどのようなサポートが考えられるのかを一緒に整理していきます。
まとめ
DBSは、脳深部に電極を留置し、電気刺激によって神経回路の活動を調整する外科的な治療法です。
特にパーキンソン病の一部の運動症状に対して用いられており、振戦やジストニアなど、特定の運動障害でも利用される場合があります。
一方、新脳針は、鍼刺激や必要に応じた電気刺激を用いる鍼灸による施術です。
- ・DBS:脳内に電極を留置して電気刺激を行う外科的治療
- ・新脳針:鍼刺激と、必要に応じた電気刺激を用いる鍼灸治療
- ※DBSと新脳針は同じ治療ではない
- ・DBSを検討する場合は、まず専門医療機関で適応やリスクについて相談することが重要
現在医療機関で治療を受けている場合は、その治療を自己判断で中止・変更せず、必要に応じて鍼灸との併用について主治医に相談してください。
一人で悩まず、まずはご相談ください
「症状について調べているけれど、よく分からない」
「現在の治療と鍼灸をどのように考えればよいのか知りたい」
そのような場合は、一人で抱え込まず、まずは現在のお悩みをお聞かせください。
東京 銀座鍼灸院では、現在の症状や身体の状態を確認したうえで、鍼灸によってどのようなサポートが考えられるのかをご説明します。
鍼灸師 人見
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参考文献・参考情報
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS.脳深部刺激療法(DBS:deep brain stimulation)
- 日本神経学会.パーキンソン病診療ガイドライン2018
- Umemura A. Deep Brain Stimulation for Parkinson’s Disease. Juntendo Iji Zasshi. 2023;69(1):21-29.PubMed
- Petersen JJ, et al. Deep brain stimulation for Parkinson’s disease: systematic review with meta-analysis and trial sequential analysis. BMJ Medicine.PubMed
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).医療機器審査関連資料
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